ドクターからのメッセージ

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おたふくかぜ(ムンプス)ワクチン

おたふくかぜ(ムンプス)ワクチンは、ムンプスウイルスを弱毒化してつくられた生ワクチンです。定期接種の対象になっていませんが、保育園などの集団生活をおくっている子どもでは、1歳を過ぎて麻しん風疹混合ワクチンの接種が終わったら受けておきたいワクチンです。

 

1回ワクチンを受けると、95%の人が免疫を獲得しますが、流行時に濃厚接触があると発症する可能性があります。しかし、発症したとしてもワクチンを受けていた子どもは、耳下腺の腫脹期間が短く、髄膜炎の合併率も1/10に低下します。ムンプス難聴の予防や成人の睾丸炎の予防のためにもおたふくかぜワクチンを受けておきましょう。

 

おたふくかぜ自然感染の症状とおたふくかぜワクチンの副反応(臨床反応)

症状

自然感染

ワクチン

耳下腺炎

70%

3%

無菌性髄膜炎

3〜10%

1/2,000〜1/6,000

脳炎

2/10,000(0.02%)〜3/1,000(0.3%)

4/1,000,000

難聴

1/400〜1/20,000

極めてまれ

睾丸炎

25%(思春期以降の)

極めてまれ

乳腺炎

15〜30%(思春期以降の)

極めてまれ

膵炎

4%(思春期以降の)

極めてまれ

                                                                                小児科 45, 871, 2004改変

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎、ムンプス)

○  おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)とは

ムンプスウイルスの感染後、2〜3週間(平均18日間)の潜伏期を経て、耳の下(耳下腺)が腫れて痛がります。たいてい左右とも腫れますが、片側だけのこともあります。腫れのピークは発症1〜3日後であり、この間はたいてい発熱も伴います。合併症として、無菌性髄膜炎(3〜10%)、脳炎(1/1,000)、難聴(1/400〜1/20,000)、精巣炎、膵炎などは、特に注意すべきです。

○  治療

治療は基本的に不要で、熱や痛みをおさえる薬を処方します。痛いときは冷湿布もよいでしょう。

○  家庭で気をつけること

食べ物:唾液腺の分泌を刺激する酸味の強い食べ物は耳下腺痛を増強するのでさけましょう。

入浴:高い熱のある時や痛みが強いとき以外は構いません。

○  こんな時はもう一度診察を

頭痛が強く、何度も吐くとき。

1週間経っても腫れがひかないとき。

熱が5日以上続くとき。

耳の下の腫れが赤くなったとき。

睾丸を痛がるとき。

○ 保育所・学校

腫れがひくまでは他の子にうつります。耳下腺の腫れが出て5日を経過し、かつ全身状態が良好になれば、登園・登校してかまいません。

○  その他

流行があれば診断は容易ですが、流行がない場合は、他のウイルス感染による反復性耳下腺炎との鑑別が困難なことがあります。この様な場合は、採血をして、ムンプスウイルス抗体価で診断することができますので、ご相談ください。

予防するには、ワクチン任意接種であるムンプスワクチンが唯一の方法です。

同時接種の利点と懸念事項

私の現時点の結論は、「体調の良い時に、同時接種をして早く免疫をつける」です。

予防接種を受けるにあたり、同時接種に不安を覚えるご両親もおられますので、以下にまとめを記載します。

(利点)

1.複数の疾患に対する免疫を早くつけられる(病気になる前に予防)。

2.受診回数を減らすことで保護者の負担を軽減。

3.基礎疾患を有する児への対応が可能(体調のよい時期に複数の免疫をつける)。

 

(懸念事項)

1.有効性が劣らないか?

→有効性、免疫原性が低下することはない。

2.安全性は大丈夫か?

→重篤な副反応が起こりやすくなることはない。

3.有害事象の因果関係解析に関して複雑な考察が必要となる可能性がある。

病気の子どもの過ごし方の注意点

病気になった時は、

(1)安静

(2)栄養

(3)保温

の3つの基本的なことに気をつけましょう。

これは、体力を温存して感染に対する余力(免疫力・抵抗力)を残しておくことにつながります。

 

そして、感染症の予防は、「手洗い」です。

一般的に病原体は、手から口や鼻に運ばれることが多いので、手洗いは感染予防には最も大事で、最も効果的な方法です。

感染症の基本的な予防策は「免疫力を温存して、感染経路を断つ」です。

子ども達の様子の見方の注意点

子ども達が熱を出したり、咳をしたり、何か変だと思われた時には、次の4点に注意してみて上げて下さい。

 

(1)遊ぶかどうか?

(2)食べるかどうか?

(3)飲めるかどうか?

(4)眠れるかどうか?(寝付けるかどうか?)

 

悪くなる時には、この順番で悪くなっていきます。

逆に良くなる時は、この逆の順番で良くなっていきます。

 

“遊ぶ” “食べる”ことができている子どもは、まだ大丈夫です。

熱があっても、咳をしていても、“遊ぶ”“食べる”ができている子どもは大丈夫です。

“遊ぶ” “食べる”ことが出来ない子どもでも、“飲める”“眠れる”ができれば家で様子をみることもできます。

 

“飲める”“眠れる”ができない子どもは小児科医に診てもらってください。

 

 

山陽新聞 岡山医療ガイド

こどもの森の小児科医(1)倉敷中央病院 小児科部長 新垣義夫先生の記事から抜粋・改変

熱がでた(発熱)

小児科の外来を受診する子どもの訴えで一番多いのが「発熱」です。

発熱は体の負担となりますが、防御反応のひとつです。

人間はウイルスや細菌などの病原体に感染すると熱を出して、体内に入り込んだ病原体の活動を抑えようとします。

平熱よりも1度以上高く、環境を整え、時間をおいても下がらないなら発熱といえます。

他にも、いつもと違う様子が無いか確認しましょう。

赤ちゃんは体温調節が未熟なため、室温や衣類の着せ方によって体温が上がることもあります。

 

<診療時間外でも電話相談や救急外来を受診が望ましい場合>

○  赤ちゃんが生後早期(0〜3ヵ月)

○  機嫌が悪い、または、発熱以外にいつもと様子が違う。

 

*  39度近くあっても子どもの様子が元気なら心配いりません。

*  熱があるのに手足が冷たい場合は、これから熱が上がることが予想されるので、毛布などで暖めてあげましょう。

*  熱が上がりきると赤い顔をして暑そうにするので、薄着にして、冷やしてあげると気持ちが良いでしょう。

生ワクチンと不活化ワクチン

○「生ワクチン」には、病原性を弱めた病原体(ウイルスや細菌)が入っています。つまり、病原体の病原性を弱めて(弱毒化)作ったものですから、病原体にかかった時とほぼ同様の仕組みで強い免疫ができます。免疫をつける力が優れている一方で、まれに病原体に罹患した時と同じような症状がでることがあります。

麻しん(はしか)、風しん(三日ばしか)、水痘(みずぼうそう)、ムンプス(おたふくかぜ)、ロタウイルスのワクチン、結核のBCGが生ワクチンです。

 

○「不活化ワクチン」は、不活化した(殺した)病原体(ウイルスや細菌)からつくられます。つまり、免疫をつくるのに必要な成分を取りだして病原性をなくして(不活化)つくったものです。病原体としての働きはないので、病原体と同様の症状が出るという副反応はありません。もちろん、接種後の発熱や注射部位の発赤腫脹などの副反応はあります。

三種混合ワクチン(百日咳、ジフテリア、破傷風)やポリオ、インフルエンザ桿菌b型、肺炎球菌、日本脳炎、B型肝炎のワクチンが不活化ワクチンです。

不活化ポリオワクチン

来月9月から、不活化ポリオワクチン接種ができるようになります。

初回接種3回と追加接種1回の計4回接種が基本スケジュールです。

初回接種は、生後3ヵ月から3〜8週の間隔をあけて3回接種。

追加接種は、初回接種後6ヵ月以上あけて1回接種してください。

 

※  生後90ヵ月(7歳6ヵ月)までの間であれば、不活化ポリオワクチンの接種が可能です。

※  経口生ポリオワクチンを1回接種している場合は、不活化ポリオワクチンを初回接種として2回、追加接種として1回、合計3回の接種をしてください。

 

○ポリオってどんな病気か?

ポリオは“ポリオウイルス”による急性のウイルス感染症で、1960年代に日本でも猛威をふるいました。ポリオウイルスに感染しても多くの場合、目立った症状は現れません。しかし、ごく稀に四肢に麻痺が現れ、その麻痺が一生残ってしまったり(小児麻痺)、重症の場合は死亡することもあります。世界では、まだポリオが発生している国がありますので、日本でもワクチンによる予防を継続する必要があります。

 

不活化ポリオワクチンって、どんなもの?

ポリオウイルスの毒性をなくし(不活化し)、免疫をつくるために必要な成分だけを取りだしてつくったワクチンです。不活化ポリオワクチンではワクチン接種によりポリオ様麻痺が発症することはありません。

歯からみるヒトの食性

米を主食とする日本の伝統的食生活は、歯からみるヒトの食性にも即しています。

永久歯32本のうち、奥歯の20本は、大臼歯と小臼歯で、米などの穀物をすり潰すのに適した歯です。ですから、ヒトは、歯形から見ると、20/32=5/8は、穀物を食べるのが、正しい食性とも言えます。

さらに、肉や魚などの繊維を噛みきるのに適した犬歯は、4本ですから、4/32=1/8、

野菜、山菜、海草を噛むのに適した門歯(前歯)は、8本ですから、2/8が適正と言えます。

そんな割合で、米を主食とした伝統的な日本食が、ヒトの食性に適合して、日本人の繁栄の基礎を成してきたのは間違いないと思います。

今こそ日本食を大事にしたいです。

真夏のRSウイルス

みなさん、RSウイルスをご存じでしょうか?

正確には、Respiratory syncytial virusと言って、冬期に流行する風邪ウイルスの1つです。2歳までにほぼ100%の子どもが感染するありふれたウイルスですが、乳幼児が罹患すると咳嗽、喘鳴が強くなり、細気管支炎や気管支炎、肺炎に伸展して、呼吸困難を呈する事のある厄介なウイルスです。

そんなRSウイルスですが、東南アジアや南アジアでは、年中みられるとの事です。しかし、なんと、日本でも夏真っ盛りの今じぶんにも発症する例があります。地球温暖化で,日本も亜熱帯化しているからでしょうか?

乳児の咳嗽、喘鳴、発熱の遷延する例は、真夏でもRSウイルス感染を疑うようにしないといけないようです。

夏かぜ

最近、「夏かぜ」の患者さんを多く見かけるようになりました。 一般には「夏かぜ」というと、夏にかかる風邪はみんな夏かぜと思われていると思います。 小児科医の私としては、「夏かぜ」とは?と聞かれると以下の様に答えています。

  1. 多くはエンテロウイルスの感染によって起こります。その中でも、特に手足口病やヘルパンギーナなどが有名ですが、そのような特徴的な症状をとらないエンテロウイルス感染症も多くあります。
  2. 冬に流行するかぜウイルスとは違って、咳や鼻は目立たず、熱が主体で、頭痛や発疹、胃腸症状を伴う事がよくあります。
  3. ウイルス感染症ですので、抗生剤は効果なく、特効薬もありませんので、自分の免疫力で良くなるのを待つ他ありません。せいぜい、解熱剤や鎮痛剤などの対症療法をする程度です。
  4. 大抵は、数日で症状が軽快していきますが、稀にウイルス性髄膜炎や心筋炎を合併することがありますので、数日で経過が思わしくないような場合には受診をしてください。

だいたい、こんな風に外来でもお話ししています。
私的には、この「夏かぜ」、嫌いではありません。 何故か?必要の無い薬を処方する必要が少ないからです。
稀な合併症には本当に注意が必要ですが、本来備わった免疫力を信じてゆっくり休む事が、最大の治療なのです。

ちょっと、暑い夏に、「ちょっと一休み」、くらいに考えて、子どもは親に甘えて下さい。
親は、子どもを信じて、治るのをじっと待って下さい。
そんな風に考えています(*^_^*)。

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